料理に疲れた

「美味しいものが食べたい」


最近の口癖になってしまった。
だからと言って「じゃあ何が食べたいの?」と聞かれても答えられないのだけれど。

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自分で作る献立は自分のレパートリーの組み合わせ。
ごはん(k通り)×お肉のおかず(l通り)×野菜のおかず1(m通り)×野菜のおかず2(n通り)×おつゆ(o通り)
※1 お肉のおかずは{肉,魚,豆腐}から選ぶ。肉はさらに{鶏肉,豚肉,牛肉}に分けられ、その中から選ぶ。
※2 野菜のおかず1,2は基本、{油炒め,煮物,サラダ}から選ぶ。
※3 具だくさんのスープはおつゆと煮物ポジションも同時に務めることができる。ただし、手間は普段のおつゆよりもかかる。
※4 金土日はお酒を飲む人間がいるのでおつゆが不要となる。
※5 ワンディッシュメニューの場合
  丼物・汁の少ない麺類(p通り)×おつゆ(o通り)
  or
  汁の多い麺類(q通り)
※6 ※がこんなに続くのかよと思ったやつは家族に料理を作っていないやつだ!そのことを責める気はないが自覚しろ!これだけのことを考えて作っている人間が家族の中にいることを知っておけ!

全て勝手知ったる味である。
もう「自分で作ったもの」の味がする。

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必死になってクックパッドを読み漁る。
つくおきレシピも、作り置き食堂まりえさんも、リョウジ先生も、デリッシュキッチンも、テイストジャパンも、地元ラジオ番組による平日更新レシピも見ている。
田舎である我が家は季節ごとの野菜で溢れる。
羨ましかろう。
首肯する人には「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と刻まれた石で殴りかかってやる。その文字の痣を作ってやる。それから野菜を持たせるから帰れ。

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その作業はもはや「料理」ではなく「処理」「処分」なのだ。


消費しても消費してもいつまでもなくならない直径15㎝の大根を、
夏には毎日30本ずつやってくるLLサイズのきゅうりを、
スーパーの特大ビニール袋にパンパンになっているピーマンを、
重ねたら傷むなどと悠長なことは絶対言わせない特大ビニール袋2つに詰め込まれたトマトを、
ため息をつかずにはいられない特大ビニール袋×5のナスを、
小さかろうと数が集まればバレーボール大になるミニトマトを、
30㎏コメ袋×2にぎゅうぎゅうに詰め込まれた傷みだしているネギを、
春先に芽は出るわ腐りまくるわ黒カビ病はすごいわ地獄の大量玉ねぎを、
ああそう考えると傷みにくく物言わぬ(どの野菜も物言わぬが)じゃがいもはいいやつだなぁ。

書き出したらキリはないが一息で言える分だけでも書けてスッキリした。まだ羨ましいと抜かす輩は出てこい。口に直径15㎝の大根突っ込むぞ。


いいか?モロヘイヤ、たけのこ、オクラ、トマトは冷凍ができるんだぞ?それでいて、このありさまだぞ?

わかったら、大根の塩昆布漬けか、大根のゆず漬けか、大根の砂糖入れた漬物、大人しく食ってろ。

手が空いてるんだったら切り干し大根手伝え、千切りしろ。

人参しりしりの用意でもいい、千切りしろ。

人参しりしりを知らないだと?クックパッド見ろ!一番人参消費できるメニューだわ!

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と、怒りで話が脱線していたので元に戻そう。
使わなければいけない食材、大人数ゆえに質より量が優先される状況。一品一品に手を掛けてはいられない。

 

毎日の食事の用意はルーティーン。作業。ノルマ。
食事はもはや残務処理。


「自分の作ったもの」の味のするモノを胃に入れて食器を下げて、とっとと洗い物をする。なんと田舎よろしく蛇口からは冷水しか出ない。地獄。

その後は残り物を小皿に移しラップをして冷蔵庫に入れ、翌朝の米を研ぐ。予約ボタンを押してようやくエプロンを外せる。

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料理に疲れた。
料理ではなく、処分に疲れている。料理を「作っている」はずなのに、余っている食材を処分しているのだ。
自分は「作っている」と教えてくれ。

 

「おいしいものが食べたい」
おいしいものって何だろう?すぐに出てきた答えは「自分が作ってないもの」だ。そう、自分が作ってないものを、「どんな味だろう?」「テラテラしたタレがおいしそう!」「肉汁だ!すごい!」「何味かわからないけどすごくおいしい!」と感動しながら食べたい。知らない味にワクワクしたいのだ。

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「ネギ塩だれ、ネギみそだれで合計20本のネギを消費した」と言ったら、初めて立った幼子かのように存分に褒めてほしい。
「玉ねぎ16個をひたすら炒めてあめ色玉ねぎを作り分割して冷凍した」と言ったら、クラッカーを鳴らしてひゅーひゅー言ってほしい。


そして、たまにでいいから、知らない味のものを食べてワクワクしたい。