雨の日に車の窓を見るのが好きだった。
窓の中で、雨粒と雨粒がぶつかってつながって流れていく。
そのまま流れていくと思ったら別の雨粒がぶつかって弾け飛ぶ。
流れていくうちに雨粒が小さくなって最後までたどり着けない。
そこに別の雨粒がぶつかってすごい勢いで窓の端まで流れていく。
もう動けないかと思ったらポツンとそこにいた雨粒と合流して再び流れ出す。
ゆっくりと流れてもう少しでゴールだと思った瞬間別の流れに飲まれる。
窓ガラスにぶつかって見えなくなるまでの物語は、退屈な移動時間に寄り添ってくれた。
車のスピードが上がると横に流れていくそれを、すごいすごいとはしゃいでいた。
ただ眺めているだけでいつまでも飽きることがなかった。
今はワイパーで窓の端に追いやる人間になってしまった。
雨が降ってふと思い出した話。