愛しい人に、残りの40日?40時間?分の命を何か(確か苦しみだったと思います)と引き換えに渡すか?って聞いたんです。
そうしたら私の手を両手で握りしめて間髪入れずに「渡す」って。
塾の部屋の一番右の机に並んで座っていました。
その儀式は3㎝平方くらいの四角い香木に火をつけて煙を吸うんです。
黄色いアゲハ蝶がいないとダメなんですけど、愛しい人は焦って早く火をつけさせようとするんです。
「まだなんだって」と言い聞かせなきゃなんです(笑)
それで誰かが急いで連れてきてくれたアゲハ蝶を確認して火をつけました。
直前に来客があって「出なくていいの?」と聞かれました。
彼女は来訪者の車に轢かれてしまう予定だったのです。ちょうどこんな車です。
なので、来訪者の車が玄関先に見えた時とても焦りました。
焦って「大丈夫だから」と返します。
他の人が出てくれて何とか回避できました。
ここで何回か失敗しているのでほっとしました。
同時に何回かやっていることを思い出して、自分がループしていることに気付いたのです。
無事儀式を始めました。
彼女は風下で火をつけようとして少しあたふたしましたが(笑)
その煙を吸った愛しい人から白い煙のように魂がすぅっと抜けていくんです。
その魂は彼女の前に現れた小さい子供のようなものに吸い取られていきました。
あれが悪魔なのでしょう。
なぜか知っていました。
怖くはない、ただの子供の顔でした。
私はそれを左の席で見ていました。
儀式を終えると愛しい人は立ち上がって残り時間で何か手伝おうとするんです。
「なにしたらいい?」って聞かれました。
儀式のあとは急激に体が衰えていくんです。
危ないので「2階に行っていてほしい」と言うと、邪魔者扱いして!と言うようにむっとするんです。かわいいでしょ。
そのあと「どれくらいなの?」と聞いてきたので、傾きが1、-5くらいの直線右下がりのグラフを指で描きました。
愛しい人は驚きながらも「そう…」と受け止めてくれて、無理な手伝いはやめて台所の椅子に座ろうとしてくれました。
もう自立することはできず私が支えている状態です。
私の席に座ると愛しい人は「並んで座ろうよ」と言ってくれました。
涙があふれそうでした。
”並ぼう“と言ってくれたのです。
そのあとさつまいもを水に浸したボウルを持とうとして後ろから急いでキャッチしました。無茶をするんです(笑)
2階では祖母がバスセンターに電話をかけてお礼を言っていると誰かが言っています。何かで一時的に2階へ追いやらざるを得なかった祖母です。
そのあたりで目が覚めました。
起きてから、彼女の最期までそばにいてやれなかったことが悲しくて(目が覚めてしまったので)、どんな状況でも感謝を忘れない祖母の強さを思い出して、涙が出ました。
彼女は苦しみと引き換えに悪魔に魂を引き渡しました。
これが悪魔との契約かと思いました。
悪魔という呼び名だけれど、狡猾さや怪しさは一切感じられず、その仕事をする者の呼び名でしかないのだなと思いました。
目を閉じたまま、その者にただ「ありがとう、ありがとう」と何度も伝えました。
愛しい人は苦しまなかった。
祖母を車で、顔馴染みだったスーパーに連れていきたいと思った。
きっと、そろそろラストチャンスだから。