『語らいサンドイッチ』谷瑞恵

 姉妹で営む手作りサンドイッチ専門店を舞台にした、1つのサンドイッチとそれにまつわるお話。

 誰かの思い出の中にある食材を使ったサンドイッチや10年前の忘れられないサンドイッチ。メニューにはなくとも、サンドイッチのことならば!と熱心な姉・笹子さんは妹・蕗子さんや近隣の人の力を借りて情報を集め”これだ”というサンドイッチを作り上げる。

 そのサンドイッチは誰かの記憶と少しだけ繋がっていて、今食べている人だけでなく当時のチリっとした気持ちも癒やしてくれるお話だった。

 笹ちゃんは料理がただの食べ物じゃないことを知っている。人に寄り添って、楽しませたり勇気づけたり、そっと心を動かすものだと知っていて、丁寧にサンドイッチを作っている。

 作中には他にも、何を作ればいいかはお客さんが教えてくれるとあった。丁寧にサンドイッチを作ることは丁寧に人と向き合うことから来ていると感じた。その丁寧さが癒してくれるのだろう。

 

 内容とは別に、ミモザの花を「細かい炒り卵」と例えていたところが非常に好きだ。

 生活に密着した表現が、素朴でやさしい手触りがあって愛らしかった。

 

 

 最後に、読後にサンドイッチシリーズの2作目と知った自分へ。

 めぐり逢いサンドイッチ(1作目)、ふれあいサンドイッチ(3作目)を読もうね!