私は泣いていない

目からボロボロと液体が溢れそうになる。

溢れる前に急いで拭い取る。

呼吸が苦しい。

ヒッ・・・ヒッ・・・と繰り返す。

時折平気を装うために深呼吸する。

液体を拭き取る。

目の奥が痛い。

扁桃腺の辺りがキュッとしまっている。

苦しい。

液体を拭き取る。

堪えようと食いしばったはずの歯がガチガチ言っている。

口を閉じようとするほどにガチガチうるさい。

歯を食いしばるための筋肉が悲鳴を上げている。

食いしばれずにただ口角を下げている。

液体が鼻水に変わり、鼻が詰まる。

震える呼吸で無理矢理息を吐く。

震える深呼吸。

決して声を出してはいけない。

私は泣いていないのだから。

視界がぼやけてもすぐに拭い取る。

私は泣いていないから。

泣いたら怒られる。

震える呼吸。

震える呼吸。

止まらない鼻水。

力みすぎて頭が痛い。

大丈夫、泣いていない。

泣いていない。

泣いていない。

震える呼吸。

ガチガチ鳴りやまない歯。

頭が痛い。

ぼやける視界。

びしょびしょの袖口。

平然を取り繕えていない呼吸。

何とか閉じたのに震える唇。

その奥でうるさい歯。

ごめんなさい。ごめんなさい。

謝ったところで何が変わる。

泣いて何か変わったか、そう問われた幼少期。

お前の中の塩分濃度くらいだと。

頭がガンガンする。

泣いていない。私は泣いていない。

頭の奥が痛い。

泣いていない。

鼻水がいっぱいになる。

頭が痛い。

泣いていないです。そう答えなくてはいけない。

震えを止めろ。

ハッ…ハッ……ハッ……

決して声を上げてはいけない。

私は泣いていない。

泣いても何も変わらないのだから。